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用語集(1)

【キーワード】地球年代学,地球惑星科学,ジオパーク,約3,500万年前の川の化石,ジオサイト(地質遺産),都城秋穂,化学分析,ドラフト,科学研究費助成事業,ジオツアー,ジオパークとして登録,ビジターセンター,大学院大学

地球年代学
地球史における様々な出来事の年代を明らかにする学問分野です。隕石などを用いて、太陽系惑星の一つとしての地球の生成年代を研究する分野でもあります。地球年代学のうち、地球が生成し岩石が出現してから以降の年代研究の分野を特に地質年代学と呼んでいます。地質年代学は大別して次の二つの分野から構成されます。(1)化石などを基にした生物の変遷や地層の層序関係などから、相対的な新旧関係を求めるもの。(2)放射年代測定法などを駆使して、地質現象の年代を具体的な数値として求めるもの。実際の年代研究においては、上記の2分野の成果や地球磁場の極性の転換の歴史などを複合し、より詳細な年代関係を明らかにすることが目指されています。『兼岡一郎著「年代測定概論」(1998・東京大学出版会)より』

地球惑星科学
地球惑星科学とは、地球はどのように誕生し、生命がうまれたのか、生命を育む星は地球だけなのか、生命はどのように人類にいたる進化をとげたのか、地球は45億年の間にどのように変わってきたのか、人間の営みによって未来の環境はどうなるのか、といった誰もが一度は考えたことのあるような問いへの答えをさがす学問です。地球惑星科学はこのように「自然をまるごと理解する」ことをめざすほか、地震や火山噴火、集中豪雨といった自然災害や地球温暖化などの環境問題といった「社会に直接関わる地球の諸問題の本質を理解する」ことを目指すという一面もあります。『日本地球惑星科学連合ホームページより』

ジオパーク
ジオパークとは、世界遺産の地質版と言われるもので、地球を学ぶ旅を楽しみ、山と川と海と大気とその大地に住む生物について考える場所のことです。2016年9月現在、国内43地域が日本ジオパークとして登録されており、そのうち8地域がユネスコ(国際連合教育科学文化機関)世界ジオパークにも認定されています。

図1 中四国周辺のジオパークの位置図。
世界ジオパーク、日本ジオパーク、準会員

岡山県を中心とする山陽〜瀬戸内地域(山口県南部、広島県、岡山県、兵庫県南部、大阪府、徳島県、香川県、愛媛県東予地区)には日本ジオパークに加盟した地域はまだありません。赤磐市の吉井地区を中心とした吉井川流域には、約3億年前から現在へ至る全ての時代の地質が分布しています。太古の川の化石である吉備層群周匝層を核とした物語を構築すれば、ここに山陽〜瀬戸内地方初のジオパークを立ち上げることができると考えます。

図2 赤磐市周辺の周匝層の分布

約3,500万年前の川の化石
吉井地区周匝から和気町佐伯地区を通り、佐伯南方の大成峠、赤磐市内のネオポリス、さらには山陽団地をかすめて岡山市東区で旭川と並行するように円礫岩が分布します(図2の朱色部分と破線矢印)。これは約3,500万年前に、アジア大陸の河谷を埋め立てた吉備層群周匝層と呼ばれる礫層で、赤磐市周辺の吉備高原で特徴的に見られる川と谷の化石です。この地層の存在は、赤磐市周辺がおよそ3,500万年の間、大陸地殻のように安定した地塊であり続けた証拠であると考えられます。このような地層は日本だけでなく、世界的に見ても極めて珍しいもので、周匝層の研究は世界第一級の課題であり,ジオパークの中心テーマとなるものです.

ジオサイト(地質遺産)
ジオサイトとは、ジオパークの中で見どころとなる地質遺産のことです。地質と銘打たれていますが、それは岩石や地層の露頭だけでなく、ジオパーク内で見られる特徴的な地形、温泉、博物館(教育施設)、農産物、文化遺産などで、それらが地質と深い関連を持っていればジオサイトに指定できます。ジオサイトは、多くの人が将来にわたって地域の魅力を知り、利用できるように保護しなければなりません。赤磐市には吉備層群周匝層だけでなく、地質学的に価値の高いジオサイトがいくつもあります。例えば、すでに文化財として整備されている岩神のゆるぎ岩や血洗の滝もジオサイトになりますし、私たちが構想する地球史研究所もジオサイト候補の一つです。

表1 赤磐市の主なジオサイト候補

都城秋穂
1920年、岡山県生まれ。理学博士。地質学者であり、科学哲学者である。地質学の巨人と称される。東京帝国大学卒業、東京大学助教授、コロンビア大学教授、ニューヨーク州立大学教授を歴任。1977年、デイ・メダル受賞(アメリカ地質学会)。『岩石学、鉱物学、海洋地質学、およびテクトニクスの分野で数々の開拓的な研究を行い、地球科学の進展に大きな貢献を行なった。特に、変成岩の理論的研究は新しい概念を導入した画期的なものであり、変成岩および変成帯の形成の解明のみならず、地質学・固体地球物理学の指導原理となったプレートテクトニクス論の確立にも貢献した(2002・日本学士院賞受賞審査要旨より)』。2008年没。

化学分析
岩石や鉱物などの試料中に含まれる化学成分の種類を決定し、またその量比を求める操作のこと。前者を定性分析、後者を定量分析と言います。さらに、試料を酸分解などによって溶液化した後に、種類や量比を求める手法を湿式分析と言います。湿式分析の際に残された廃液は回収して、適切に処理されなければなりません。

ドラフト
化学実験などで有害な気体が発生するときや、揮発性の有害物質を取り扱うとき、もしくは有害微生物を扱うときに安全のために用いる局所排気装置のドラフトチャンバーのこと。研究者や実験者を有害物質から保護することを目的とした装置で、危険物質や有害物質の封じ込め機能と排気機能を有した囲われた作業空間を持っています。

科学研究費助成事業
文部科学省およびその外郭団体である独立行政法人日本学術振興会の事業で、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」のことです。ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うもので、一般に、科研費と略称されます。主として研究期間と規模の違いによって、1課題当たり100万円〜5億円程度の助成が為されます。

ジオツアー
ジオツアーとは、ジオパークの中でジオサイト(地質遺産)を巡るツアーのことです。各地のジオパークでは、多くのモデルコースを作っており、ガイドと一緒にジオサイトを巡ることで、ジオパークの大地の成り立ち、文化や歴史を学んで楽しめるようになっています。ジオパークの面白さはこのジオサイトやジオツアーの数や多様性で決まるといっても過言ではありません。『ゆざわジオパークホームページより』

ジオパークとして登録
ジオパークには国内の審査を経て登録される日本ジオパークと、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の認定を受ける世界ジオパークがあります。ジオパークになろうとする地域は、まず、自治体や商工会・観光協会・博物館・研究機関他が連携した地域協議会などの活動の主体を作らなければなりません。その地域協議会を通じて日本ジオパークネットワーク(JGN)へ加盟し、準会員(地域団体のまま)となります(図3)。その後、日本ジオパーク委員会へ審査を申し込みます(書類審査と現地審査)。その審査で合格すればJGNの会員として正会員として認定され、ジオパークと名乗ることができます。次に、ユネスコ世界ジオパークとなるためには、JGNによる事前審査を受けなければなりません。それに合格した日本ジオパークだけが世界ジオパークネットワーク(GGN:Global Geoparks Network)への加盟申請を行うことができます。そのGGNの審査に合格すれば晴れて「ユネスコ世界ジオパーク」と名乗ることができます。なお、日本ジオパークもユネスコ世界ジオパークも4年に一度の再審査が義務付けられており、それに合格できなければ加盟が取り消されます。ジオパークとして登録された後も、ジオサイトや観光施設の整備、地域への教育支援、さらに研究活動を継続することが必要です。

ビジターセンター

図3 ジオパーク登録への道のりを示したフロー図
ビジターセンターとはジオパークにおける研究・教育・普及啓発活動の実施機関のことで、そこではジオサイトを活用した経済発展を促進させ、自治体・地域社会・民間による共同行動を計画します。ビジターセンターはジオパークの入口であり、ハブ施設でもあります。ジオパークに訪れる様々な人々が最初に集まる場所です。
赤磐市とその周辺地域(特に、吉井川流域)においてジオパークが設立された場合、地球史研究所にビジターセンターとしての役割を持たせることができます。そこでは常に最新の成果をジオパークへ提供すると共に、赤磐市、吉井川、吉備高原などの地元の自然と文化を様々な媒体を活用して国内外に発信します。


大学院大学

学部を持たない大学院のみで構成される大学。既存の大学から独立した教員、施設、設備や、独自の教育と研究の目的、プログラムおよび組織を有する独立大学院の総称。その歴史は1988年に発足した、主として研究機関の連合組織である国立の総合研究大学院大学に始まります。兵庫県立大学には、ジオパークとコウノトリを地域資源として活用する大学院のみのキャンパスがあります。そこでは、全国の大学を卒業した20数名の若手研究者に対して、持続可能な地域社会の再生と創造に貢献できる力を養成するための教育が実施されています。これは、地球史研究所の将来の在り方を考える上で、とても参考になる事例です。