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【5】平成31年度(2019年度)の活動計画

(1)備前県民局協働による地域づくり助成金

 「ジオの魅力を学ぶ体験する協働事業の推進」

 平成30年度から続く協働事業の2年目に当たります。助成金の上限は100万円です。今年度はキリンビール岡山工場の協力を得て、7月に工場の位置する万富周辺の見学会を、また、8月に工場敷地内で科学体験フェスタを開催します。

(2)岡山県観光連盟との共同開発

 これまで、赤磐市、備前県民局及び岡山県地域課題解決支援プロジェクと協働して企画試行してきた「ジオサイトの見学会」を観光ツアーとして自走させるために、岡山県観光連盟の協力のもと、旅行業者と共同して開発に取り組みます。最終的に、jGnetはジオサイトの掘り起こしとツアーの案内人を務め、ツアーの募集及び催行は旅行会社が担当することになります。

(3)吉井川流域地質資源活用推進協議会

 今年度より岡山県地域課題解決支援プロジェクトから自走する形で、吉井川流域8市町による新たなジオパークを目指した協議会が立ち上がりました。jGnetは顧問として協議会に参加しますが、また同時に、ジオの講演会やフェスタ等の普及啓発活動を吉井川流域の各地で行って、地質資源の魅力とその活用方法について住民、事業者、行政の方々に伝えていく所存です。

(4)その他

 地球史研究所での研究・教育支援及びジオトピア活動、吉井川流域市町における普及啓発活動は今年度も継続して実施します。

【4】ジオトピア活動

 ジオトピアは、大地を意味するジオと、理想郷を意味するユートピアに由来する造語で、地球史研究所におけるjGnet、赤磐市地域おこし協力隊並びに徳富ファーム(地球分室)の3者の専門性を活かしたジオの協働事業に対して名付けられました。将来は、ジオトピアを吉井川流域のジオサイトの一つとし、地域の協働の場であり、かつ見学・体験施設となることを望んでいます。

<構想の概要>

・ジオパークを目指した地域活動(実績づくり)であること

       → 将来のビジターセンター併設を想定した活動

・赤磐市在住の多様な才能との協働事業であること

       → 都市計画家、農業従事者、地域おこし協力隊、研究者など

・内容は、参加者の専門性を活かせるもの

       → 都市計画+植物=庭園化(土づくりと植栽作業)

・地球史研究所の敷地を有効活用する

       → 研究活動に支障がないエリアで、植栽から始める

(図11)グラウンド南西端に作られた将来のバラ園

 

 

【3】地球史研究所の活動

(図6)地球史研究所(赤磐市周匝1599)

(1)公表論文(国際誌)

板谷徹丸
「Itaya T., Hyodo H., Imayama T. and Groppo C. 2018. Laser step-heating 40Ar/39Ar analyses of biotites from meta-granites in the UHP Brossasco-Isasca Unit of Dora-Maira Massif, Italy. Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 113, 171-180.」

乙藤洋一郎
「Okayama K., Mochizuki N., Wada Y., and Otofuji Y. 2019. Low absolute paleointensity during Late Miocene Noma excursion of the Earth’s magnetic field. Physics of Earth and Planetary Interiors, 287, 10-20.」

(2)研究活動

乙藤洋一郎
地球磁場の変動研究(蒜山地質年代学研究所との共同研究)
地球史研究所周辺の地域地質(特にP-T境界の地質)の研究

板谷徹丸
人類紀精密年代測定(カリウム・アルゴン法)の研究開発

蜷川清隆
大気組成変化(ラドン測定)の研究

横山義人
吉井川流域の地域地質(鉄の道)の研究

(3)研究集会

平成30年6月:地球史研究所主催「地域地質巡検」(講師:乙藤)
見学地:ペルム紀の舞鶴層群と三畳紀の福本層群および山砂利層
参加者:立命館大学(北場准教授)神戸大学(北岡助教)他2

平成30年7月:岡山県総合教育センター研修講座(高校教諭10名)
講 師:乙藤洋一郎、板谷徹丸
内 容:講義(放射年代測定法、日本列島・日本海の形成)、地質露頭巡検

(図7)地球史研究所での研修講座の一コマ

平成30年8月:小教研赤磐・加賀支部理科部会「夏の巡検」
案内人:乙藤洋一郎、横山義人、板谷徹丸
参加者:中学校教諭2名、小学校教諭13名
内 容:講義(日本列島・日本海の形成、ジルコン分離)、地質露頭巡検

(図8)地質露頭巡検で観察した福本層群の漣痕

平成31年1月:若桜に分布する蛇紋岩の古地磁気学(担当:乙藤)
参加者:3名

平成31年3月:プロジェクトA(代表:清川昌一(九州大学))
参加者:地球惑星科学系研究者30名

平成31年3月:地球史研究所サロン
清川昌一(九州大学):ジオパークについて
渡辺 剛(北海道大学):サンゴ生息と温暖化作用
山口耕生(東邦大学):K-Pg境界恐竜を滅ぼした隕石衝突
尾上哲治(熊本大学):P-T境界舞鶴帯にも残る一大生物絶滅事件

(4)環境整備

  • 草刈りと剪定(イベントとして行ったもの)
    • 平成30年7月:草刈り(清水歯科側)
    • 平成30年10月:草刈りと剪定木の移動
    • 平成30年12月:研究棟とその周辺の大掃除
  • 新設機器:スピナー(地磁気測定)、大型岩石カッター
  • 施設整備:水道延伸(プレハブ)、ガス給湯器(1F・プレハブ)、電気温水器(3F)、正門案内看板および外灯3基(赤磐市予算)
(図9)研究棟1階のガス湯沸かし器
(図10)赤磐市によって設置された正門の外灯

(5)その他(研究費応募結果)

トヨタ財団1544万円、マツダ財団100万円、セコム科学技術振興財団100万円、科研費500万円、ベネッセ財団100万円(すべて不採択 残念!)

【2】普及啓発活動

(1)教育支援(出前授業等)

平成30年4月:奈義町教育委員会「なぎの子塾」(講師:横山)
内 容:那岐山の岩石を見る(那岐山山麓にて)

平成30年5月:奈義町教育委員会「なぎの子塾」(講師:横山)
内 容:岩石中の砂鉄
会 場:奈義町文化センター

平成30年6月:奈義町教育委員会「長寿大学」(講師:横山)
内 容:奈義町の地質を見る
会 場:奈義町文化センター

平成30年7月:奈義町教育委員会「学習合宿」(講師:横山)
 内 容:黒ぼくを科学する
 会 場:奈義町文化センター

平成30年10月:城南小学校「地域地質巡検」(講師:乙藤・横山)
参加者:城南小学校生徒(6年生23名;教諭2名)
見学地:茶臼山城周辺

(図3)地域地質巡検の見学コース(徒歩)

(2)講演活動

平成30年6月:鳥取地学会講演会(講師:乙藤)
内 容:大地が裂ける現象を日本列島と日本海に見る
会 場:鳥取県立博物館

平成30年7月:桜が丘老人クラブ文化講座(講師:乙藤)
内 容:日本列島の成り立ち<日本は2本だった>
会 場:桜が丘生き生き交流センター

(図4)桜ヶ丘地区老人クラブ文化講座のチラシ

平成30年10月:鏡野町環境シンポジウム(講師:板谷)
内 容:地質科学から見た鏡野町の魅力
会 場:上斎原文化センター「ヴァルトホール」

(図5)鏡野町環境シンポジウムでの講演する板谷理事長

平成31年1月:日本振興会講演会(講師:乙藤)
内 容:日本列島の成り立ち<日本は2本だった>
会 場:倉敷市児島支所 児島市民交流センター

平成31年1月:第2回生物群横断系統地理ワークショップ(講師:乙藤)
内 容:日本列島の成り立ち<日本は2本だった>
会 場:信州大学理学部

平成31年2月:西原ふれあいサロン講演会(講師:横山義人)
内 容:奈義町の地質を見る
会 場:西原コミュニティハウス

平成31年2月:ワンダーシップ岡山キャビン2月例会(講師:板谷)
内 容:吉備高原とジオパーク

【1】委託事業と助成金事業

 平成30年度(2018年度)には、2件の委託事業を受注し、1件の助成事業を獲得しました。

(1)委託事業1「吉井川流域のジオサイト調査委託事業」

 平成29年(2017年)4月から始まった岡山県地方創生推進室を事務局とする「岡山県地域課題解決支援プロジェクト」の委託事業です。吉井川流域11市町を対象とした「ジオパークの活用等による観光地域づくり」を目的としたプロジェクトにおいて、jGnetは学術的な助言と吉井川流域のジオサイトの調査を行ないました(委託費約500万円)。プロジェクトは、平成31年(2019年)3月に活動の成果として「ガイド向けマニュアル」を作成しました。このマニュアルは吉井川流域のジオガイドの養成を想定し、吉井川流域の地形と地質の成り立ちを解説した後、44箇所のジオサイト候補の見どころを示しています。

「吉井川流域のジオサイト調査委託事業」の成果が岡山県のホームページに公開されました。下記のページに掲載されていますので、ぜひご覧ください。http://www.pref.okayama.jp/page/600165.html

・これまでの取り組み状況[PDFファイル/601KB]
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/254093.pdf

・ガイド向けマニュアル[PDFファイル/6.94MB]
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/254022.pdf

(2)委託事業2「地球史研究所展示パネル制作」

 赤磐市との教育研究連携の一環として、赤磐市総合政策部から地球史研究所に常設するパネルおよび正門案内板の制作を委託されました(依託費108万円)。赤磐市と吉井川流域を対象としたジオの成り立ちなどを題材とし、岩石、構造、地史などに関する基礎知識も含めて12枚のパネルを制作しました。これらのパネルは研究所を訪れる外来者への解説資料であると共に、周辺小中学校等での出張授業や各種講演会などに当たっての解説資料としても活用できるように、持ち運びができるものとしました。

(図1)地球史研究所正門に設置された案内看板
(図1)地球史研究所正門に設置された案内看板

展示パネル

  1. jGnetとは
  2. 赤磐市の地質図(解説)
  3. 吉井川流域のジオの成り立ち(地形)
  4. 吉井川流域のジオの成り立ち(地質)
  5. 吉備層群周匝層発祥の地
  6. 和気カルデラ説
  7. 赤磐市の地質図(図面)
  8. 岩石のできるところ
  9. プレートテクトニクスと日本列島
  10. 地質構造
  11. 生物体量絶滅事件
  12. 地球史研究所周辺のジオポイント

(3)助成事業「ジオの魅力を学ぶ体験する協働事業の推進」

 これは、備前県民局公募型協働提案事業(地域づくり事業)として採択されたjGnetの普及啓発活動です。平成30年度及び平成31年度の2カ年に渡って実施されています。平成30年度の助成金は200万円でした。赤磐市を含む吉井川中下流域と、旭川中下流域のジオサイト見学会、親子向けの科学体験フェスタ、地域の食の掘り起こしを目的としたジオグルメ(あかいわ祭り)、そして地域の振興に貢献されている先達との交流を目的としたジオの報告会を実施しました。それら4回のイベントに対して、備前県民局管内から700人以上の一般の参加がありました。今年度は1,000名を超える参加者を目指しています。

(図2)見学会の記録写真(土橋鉱山にて)